2014.08.18 協和海運 ⑤
最新の船員しんぶん(8月5日号)の一面トップは、協和海運問題だ。

例のごとく、抗議デモの様子が、大きな写真入りで報じられている。

今回は、11名の組合員を雇用しなかった新協和海運の筆頭株主である、ダイトーコーポレーションが標的になったようだ。

新協和海運の株主は、ダイトーコーポレーション(51%)と従業員持株会(49%)の2者だけであり、ダイトーコーポレーションを筆頭株主とする言い方も、若干、大げさに感じるが、どうであろうか。

記事の内容は、増田常男関東地方支部長が先頭に立ち、ダイトーコーポレーションの本社前で、150人が結集して抗議行動を行い、ダイトーコーポレーションの株主責任を問うとともに、11名の組合員を海員組合の組織を挙げて全力で闘うことをアピールしたようだ。

ところで、ダイトーコーポレーションは、100名以上の従業員が海員組合に加入し、全国委員も輩出している、れっきとした組織会社である。

担当は、関東地方支部である。

その担当会社の前で、関東地方支部は、抗議行動を行ったということだが何か変ではないだろうか。

関東地方支部が、ダイトーコーポレーションの株主責任を問題とするならば、まず、団体交渉を申し入れ、追求すべきではないだろうか。

これまでの船員しんぶんには、ダイトーコーポレーションと団体交渉を行ったとの記事は見受けられないが、もし行っていたとすれば、その内容について広く組合員に周知すべきである。

仮に、ダイトーコーポレーションが団体交渉を拒絶しているとすれば、会社前の抗議行動ではなく、争議行為により、事態の打開を図るべきではないだろうか。

そこで問題なのは、ダイトーコーポレーションの組合員が、協和海運問題について、どのような考えを持っているかである。

関東地方支部の方針をダイトーコーポレーションの組合員が支持しているとすれば問題はないが、そうでないならば、関東地方支部の対応は苦しいものとなろう。

協和海運問題は、度々、船員しんぶんで取り上げられるが、その内容は、抗議行動の様子を掲載するものばかりで、神奈川県労働委員会に申し立てた不当労働行為救済申立てや、横浜地裁で争われている地位保全等仮処分命令申し立ての進捗状況などは、全く報じられていない。

海員組合は、11名の組合員を守るため、組織を挙げて全力で闘うと意気込むが、実際にどのように闘っていくのか、現状はどのようになっているのか、そうした情報が、全国の組合員との間で共有できなければ、組織を挙げた闘いとは言い難いのではないだろうか。

協和海運問題は、関東地方支部のお膝元で、堂々と脱組織が図られた事例であり、全国の組合員が注視していることを十分理解した対応が望まれよう。



FC2 Management
長崎市で8月9日に開かれた、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典において、長崎市長が読み上げた平和宣言の中で、集団的自衛権に言及したことが話題となった。

この長崎市長の集団的自衛権発言に対し、自民党のある代議士が、自身のブログで、長崎市長を批判していたことが判明し、論争が起きている。

このところ、集団的自衛権に関する報道は、連日のように、新聞やテレビで流され、否が応でも国民の関心は高まり、国論を分ける課題に発展している。

そうした中で、被爆体験のある長崎市民の代表である長崎市長が、平和宣言の中で、集団的自衛権に懸念を表明したことが、ことさら非難の対象となるべきものとはとても思えない。

長崎の平和宣言は、市民ら15人で構成された起草委員会において検討された上で、発表されたという経緯から考えても、長崎市民の声として、素直に受け止めるべきである。

個人であれ、組織であれ、言論の機会が奪われることがあってはならず、表現の自由によって、民主的な意思決定に参加することが保障されることが、言論の自由ということであろう。

ところで、集団的自衛権について、海員組合からの発信が全くない。

これだけ世間の注目を集める問題でありながら、機関紙である「船員しんぶん」紙上において、集団的自衛権に関係する記事を目にすることはできない。

政治家やマスコミが口にする、集団的自衛権に関する論議の中では、シーレーン防衛、ホルムズ海峡封鎖、機雷掃海、邦人輸送などの言葉が躍り、挙句には、民間船員を予備自衛官とする話まで飛び出す始末だ。

よくよく考えると、集団的自衛権問題に最も影響を受ける職業は、自衛官を除けば、船員と言うことが出来よう。

その船員を代表する海員組合が、集団的自衛権問題に口を閉ざしていて良いのだろうか。

確かに、集団的自衛権や、その行使を容認するための憲法解釈の変更問題は、組合員の間でも、意見の分かれる問題であろうが、だからと言って、黙っていては、責任の放棄と言わざるを得ない。

先の大戦で、多くの船員が犠牲になり、近くはイラン・イラク戦争において組合員の乗る船が攻撃され、1名が亡くなられるという悲劇が起きているのである。

海員不戦の誓いは、胸に手をあて頭を垂れれば叶うものではなく、実現するための行動が伴わなければならない。

海員組合は、集団的自衛権問題が、組合員にどのような影響を及ぼすことになるのか、情報を集め、分析し、組合員に提供し、論議の土壌を形成することぐらいはしなければならないであろう。

また、日本船主協会との間では、船員政策協議会を開催し、労使問題として、事前に話し合うべきである。

さらに、ソマリア沖の海賊対策で、太いパイプがあると思われる、外務省や防衛省との間の情報交換についても、可能な限り、組合員に伝えるべきである。

産業別単一労働組合、つまり海のナショナルセンターとしての役割は、こういう事態にこそ真価が問われるのではないだろうか。

日頃より、組合員の権利と生活を守ると声高に叫ぶ労働組合に加入している組合員が、毎日新聞の記事を見て、はじめて自らの置かれた立場を知るなどということは、あってはならないことである。







海員組合は、8月3日の毎日新聞の報道に対して、8月6日、声明を発表し、海員組合のホームページにも掲載した。

内容は、極めてシンプルで、民間船員を予備自衛官とすることは、事実上の徴用であり、断固反対するとの趣旨である。

この判断に異論をはさむものではないが、ホームページにわざわざバナーを設けてまで発表した声明としては、説明不足と言わざるを得ない。

この声明だけでは、海員組合が、どこまでこの問題に真剣に取り組む決意を持っているのか、組合員は量りかねるであろう。

毎日新聞の記事は、すでに防衛省は、津軽海峡フェリーの「ナッチャンWorld」と新日本海フェリーの「はくおう」を、今年度末まで7億円で借り上げたと報じているが、この報道の真偽について、声明は、全く触れていない。

仮に事実だとすれば、すでに会社は、防衛省との間で、有事に2隻のフェリーを提供する契約を結んだものと思われる。

この場合、会社は、船舶だけを提供するのではなく、乗組員も乗船したまま提供し、有事の際の輸送に従事させることになろう。

そうすると、乗組員は、予備自衛官とならなくとも、会社と防衛省の契約に基づき、防衛省からの命令があれば、戦闘地域への輸送活動に追い込まれるのである。

従って、海員組合は、新日本海フェリーと津軽海峡フェリーの2社が、防衛省に2隻のフェリーを提供することについて、断固反対しなければならない。

そうしなければ、乗組員は、予備自衛官とならなくても、事実上、徴用されることになるのである。

海員組合は、この問題について、会社や防衛省との間で、どのような協議を行ってきたのか、組合員に明らかにしなければならない。

会社が、海員組合を無視して防衛省と契約を交わしたのか、それとも海員組合と事前に交渉し、了解を得て契約を交わしたのか、どちらなのかも判然としない。

海員組合は、防衛省から、今回の問題について事前に説明を受けていたとすれば、その経緯についても、組合員に公表しなければならない。

組合員は、事情が分からなければ、怒りの矛先をどこへ向ければよいのか、迷ってしまうであろう。

今回の声明は、奇しくも69年前、広島に原爆が投下された日に発表され、9日の長崎、そして15日の終戦記念日と続き、わが国全体が平和を誓う日々が続くことになる。

海員組合は、今回の出来事を奇貨として、海員不戦の誓いを、あらためて内外にアピールする活動に全力を傾注してもらいたい。



昨日、友人から、「毎日新聞を見たか?」との電話があり、取っていないので見ていないと答えたところ、驚くべきことが掲載されているとのことであった。

早速、ネットで検索してみると「民間船:有事の隊員輸送 船員を予備自衛官として戦地に」とのタイトルを見つけ、目を通すと、友人が慌てて電話をくれた意味が良く分かった。

それは、防衛省が、有事の際に自衛隊員を戦闘地域まで運ぶために、民間フェリーの船員を予備自衛官とし、現地まで就航させることを検討しているというものである。

すでに防衛省は、津軽海峡フェリーの「ナッチャンWorld」号と新日本海フェリーの「はくおう」の共に1万トンを超える2隻のフェリーを、今年度末まで7億円で借り上げたこと、そして、来年度以降は、この2隻を、平時は民間、有事には防衛省が使う仕組みを目指すという。

この2隻の運航要員については、自衛官OBの予備自衛官や、あらかじめ予備自衛官に仕立てた民間船員を充てることを検討しているとのことだ。

この記事を見て、頭に浮かぶのは「徴用」という二文字だ。

先の大戦において、民間船員と商船のほとんどが徴用され、約2500隻の船舶と、6万人以上の船員が犠牲になったこと、海員組合の元関西地方支部長であった新古勝さんの「事実上の徴用であり、太平洋戦争の悲劇を繰り返しかねず、絶対反対だ」とのコメント、防衛省が借り上げたフェリーの現役船長の「そんな話は全然聞いていない」との話も、この記事には掲載されている。

調べてみると、同様の記事が、各新聞で、かなり前から流れていることが分かった。

そこで、気にかかるのが、海員組合の対応である。

2隻のフェリーに関係する2社は、海員組合との間で労使関係があるため、津軽海峡フェリーを担当する道南支部(函館)と新日本海フェリーを担当する大阪支部は、会社からの申し入れがあり、当然、知っていたはずである。

また、海員組合の組織方針に大きく影響する案件であるから、組合本部も知らなかったとは考えられない。

では、なぜ海員組合は、この件について、これまで言及を避けているのか不思議でならない。

海員組合の活動方針には、「戦争の被害者にも加害者にもならない」「有事法制を発動させない」「平和憲法を守れ」を合言葉として、「海員不戦の誓い」が高らかに掲げられている。

例年8月15日には、関西地方支部に開設している「戦没した船と海員の資料館」において追悼式典が行われる。

それには組合本部から組合幹部が参加するが、その際、今回の件について、どのような見解を示すか、組合員をはじめ関係者は大きく注目するものと思われる。

今回の記事で、最も驚いたのは、現役船長の「そんな話は全然聞いていない」とのコメントである。

現場組合員の知らないところで、徴用に結びつくような問題が密かに進められているのであろうか。

海員組合は、実は知らされていなかったのか、それとも知っていたが知らせなかったのか、その点は、今後、組合員の重大な関心が集まることになろう。


海員組合は、東京都労働委員会が6月23日に交付した不当労働行為救済命令を不服として、中央労働委員会に6月26日、再審査の申立てを行ったが、その日程がようやく決まった。

中労委での再審査は、9月1日(月)午後1時から行われることになった。

日程の調整は、中労委事務局が行い、最初に、8月18日、20日、21日の3日が提示されたが調整がつかず、次に8月25日。26日、9月1日の3日が提示され、最も遅い、9月1日となったもの。

再審査の申立てについては、労働組合法第27条の15に規定されている。

(再審査の申立て)
第二十七条の十五  使用者は、都道府県労働委員会の救済命令等の交付を受けたときは、十五日以内(天災その他この期間内に再審査の申立てをしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に中央労働委員会に再審査の申立てをすることができる。ただし、この申立ては、救済命令等の効力を停止せず、救済命令等は、中央労働委員会が第二十五条第二項の規定による再審査の結果、これを取り消し、又は変更したときは、その効力を失う。
2  前項の規定は、労働組合又は労働者が中央労働委員会に対して行う再審査の申立てについて準用する。


これによれば、不当労働行為救済命令は、中労委に再審査の申立てを行った場合でも、都労委の命令(初審命令)は停止されておらず、再審査で取り消しまたは変更されるまでは、履行する義務があることになる。

従って、現時点で、海員組合は都労委が発した初審命令を履行しておらず、労働組合法に違反した状態となっている。

訴訟においては、一審判決に不服があり控訴した場合、判決が確定していないため、一審判決を履行する義務は生じないが、労働委員会命令の場合は、異なっているのだ。

中労委は、海員組合に対し、7月3日付で、初審命令の履行状況について報告を求めているが、どのような報告を海員組合が行っているかは、今のところ分かってはいない。

労働委員会規則第51条の2は、「中労委会長は、使用者が再審査を申し立て、命令の全部又は一部を履行しない場合において、必要があると認めたときは、使用者に対し、命令の全部又は一部の履行を勧告することができる。」と定めている。

労働組合である海員組合が、労働組合法の定めに違反して、初審命令を履行しない理由をどのように報告するのであろうか。

さらに、中労委会長から、命令履行の勧告が発せられるような事態となった場合、どのように組合員への責任を果たそうとするのであろうか。

海員組合は、再審査申立ての時点で、初審命令に対する不服の要点及び不服の理由については、追って主張するとしているが、現時点で海員労組には届いていない。

労働組合である海員組合が、立場が使用者であっても、労働組合法を遵守してこそ「海員組合」ではなかろうか。

各地の労働委員会で、使用者である船主が繰り返してきた態度と同じであれば、海員組合への信頼は大きく損なわれることにつながろう。

不当労働行為問題の解決は、使用者が労働組合との団体交渉に、誠実に臨むことを決意すれば、瞬時に解決することを、海員組合も数多くの体験から学習していることを期待したい。