偽計業務妨害裁判の一審判決に関する私の所見は、第三回となる今回で、ひとまず完結としたいと思う。

最終回は、コメントに関する法的な位置づけについてである。

ブログの管理者である私が、読者から寄せられたコメントの表現について、海員組合に対して責任を負う場合があるか、という点について、海員組合の主張は、次のとおりであった。

仮に,本件コメントの中に,被告ではなく第三者が投稿したものがあるとしても,被告が本件コメントの内容を知りながらこれを漫然と放置するという不作為は,被告自身が本件コメントを書き込む行為と同視し得るものであり,被告には本件コメントについての管理責任が認められる。

被告は,①本件ブログにコメント欄を設けない,②記事単位でコメントを受け付けるか否かを設定し,特定のコメントを非表示にする,③コメントを承認制にする,④コメントを削除する,⑤あらかじめ禁止ワードを設定し,禁止ワードを含むコメントは掲載されないようにする,⑥あらかじめ禁止IPアドレスないし禁止ホストを設定し,これらから投稿されたコメントは掲載されないようにする,といった方法でコメントを選別することができる一方で,被告及びFC2以外の第三者は,上記①~⑥の作業を行うことができない。したがって,被告は,本件ブログにつき管理可能性を有しており,かつ,これを独占している。

被告が本件ブログの管理を怠った場合,名誉毀損,信用毀損,プライバシー侵害,営業秘密の流出,知的財産権の侵害,犯罪行為の誘発,自殺の誘発などといった事態が想定され,アクセス制限を設定していない本件ブログは,全世界のインターネット利用者が簡単に閲覧することができることからすれば,上記の事態が生ずると,特定の人物が社会的に抹殺されたり,団体が破滅に追い込まれたり,法秩序が乱されたりするといった由々しき結果が生ずる可能性があり,かつ,そのような事態によって失われた信頼等を回復することは極めて困難であることが多い。したがって,被告がブログの管理を懈怠することによる被害の甚大性は計り知れない。

被告は,事前の削除要請がないから不法行為は成立しないと主張するが,名誉毀損の被害者が,事前の削除要請をする,仮処分を申し立てる,訴えを提起する等の様々な法的措置のうち,いずれの手段を選択するかは自由であり,事前の削除要請や仮処分の申立てがないから不法行為が成立しないなどという立論は誤りである。


これに対する私の反論は、次のとおりである。

そもそも,ブログのコメント欄の表現について名誉毀損が問題となっている場合,被害者がブログ管理者を提訴する以前の段階や,提訴後であっても一定の司法判断が下る前の段階では,管理者が当該表現を削除しないことにつき被害者に対して不法行為責任を負うのは,極めて例外的な場合に限られるというべきである。なぜなら,表現行為者でない管理者においては,当該表現に摘示されている事実が真実であるか否かを的確に判断するのは通常困難であるし,当該表現行為の目的や意図を把握することも難しいのであって,このような場合でも管理者が法的責任を問われることになれば,管理者は,事実上,自ら真偽や意図を判断し得ないコメントについては,あまねくこれを削除しなければならなくなり,思想の自由市場に強烈な萎縮的効果を及ぼすことになるからである。
そして,管理者が不法行為責任を負う「極めて例外的な場合」とは,当該表現が名誉毀損表現であること,これによって被害者の受ける損害が重大であることが,それぞれ一見して明白である場合であり,「名誉毀損表現であることが一見して明白」とは,当該表現により被害者の社会的信用が低下することの明白性のほか,事実の公共性,目的の公益性,真実性ないし真実相当性のいずれかの免責要件を欠くことの明白性をも含むものと解する。つまり,さしたる検討をせずとも,表現内容が虚偽であることや表現行為の目的が専ら公益を図るものでないことなどを明確に認識し得る場合であって,しかも,表現内容自体も相当に悪質であり,これを放置すると被害者が重大な損害を受けることが確実であるときに,管理者は不法行為責任を負うことになる。なお,この「一見明白性」の立証責任は被害者側が負うべきである。

仮にコメント中に名誉毀損表現が含まれていたとしても,被害者からこの点について指摘を受け,削除を要請されない限りは,ブログの管理者に対して当該コメントの削除義務を負わせるべきではない。管理者は,常時コメント欄への投稿の有無を確認し,各コメントの内容を熟読し,これらが名誉毀損表現に当たるか否かを綿密に検討しているわけではないから,被害者からの削除要請もないまま管理者が不法行為責任を負うことになると,管理者は,名誉毀損かどうかの判断がつかないコメントは自ら進んで削除するしかないということになるし,コメント欄を設けること自体により非常に大きな法的危険性を抱えることになる。このような事態は,自由な言論がもつ価値や有用性に照らし相当でない。


私は、ブログ管理者として、コメントについて一切の責任を放棄するつもりはないが、少なくとも、海員組合は、コメントの削除を要請することによって、コメントを削除すべきかどうかを検討する機会を私に与えなければならなかったのではなかろうか。

何らの事前の削除要請もないまま、私に対して唐突に1億円の損害賠償裁判を起こし、しかも船員しんぶんでこれを大々的に発表したという海員組合の態度には、私は尋常ならざるものを感じるのである。

海員組合は、私が田中伸一氏らを恨んでいると主張するのだが、このような海員組合の姿勢を見る限り、実情はむしろ逆で、田中伸一氏らが私に対し、並々ならぬ怨恨を抱いているのではないだろうか。

ところで、海員組合は、一貫して、投稿されたコメントを無価値で有害なものとして論じてきたのであるが、私はこのような考え方にも反対である。

匿名でのコメントの投稿に関しては、少なくとも、近年の海員組合の強権的な運営方法を見る限り、その有意性を否定することはできないであろう。

現状では、報復を恐れるあまり、組合員や組合従業員が、実名を出して指導部の批判をすることは、ほとんど期待できないからである。

このような場合、匿名で投稿されたコメントには、今後の組合運営に資する示唆なり考え方なりが含まれている可能性があると考えるべきである。

コメントの中には、やや過激な表現が用いられているものも散見されるが、コンプライアンス違反を繰り返してきた海員組合に対しては、ある程度激しい表現が用いられることも、許容されなければならない。

投稿されたコメントをおしなべて有害なものととらえ、いちいち目くじらを立てては裁判を起こすというやり方は、理性的ではないし、成熟した大人の振る舞いではないように感じる。

指導的立場にある森田組合長や田中副組合長には、他者の意見にも耳を傾ける寛容さを養ってもらいたい。

それこそが組合民主主義というものである。

最後に、コメントに関する判決の説示をお示しする。

裁判所には、大筋において、私の見解を酌んでいただいたものと理解している。

ブログの開設者が当該ブログにコメント欄を設け,コメントの投稿者による自由な意見表明の場を与えている場合,コメント欄に投稿されたコメントの内容については当該コメントの投稿者が第一次的に責任を負うべきであり,ブログの管理者は,ブログに投稿されたコメントにつき,その投稿目的や前提とする事実の真否について把握していないのが通常であって,これらを逐一把握することを求めるのも酷でもあるから,ブログの管理者がウェブサイトの運営者(本件ではFC2)に対する関係で管理責任を負っており,コメント欄について管理可能性を有しているからといって,コメントの投稿者と同一の責任を負うものと解すべきではなく,当該コメントの内容が違法に他人の権利を侵害するものであることが明白であるといった特段の事情が存在する場合に限り,ブログの管理者は,当該他人に対し,当該コメントに対して削除等の措置を執らなかったことについて不法行為責任を負うものと解するのが相当である。したがって,コメントの内容につき名誉毀損の成否が問題となる場合には,それが他人の社会的評価を低下させることが明白であり,かつ,違法性阻却事由が存しないことが明白であるといった特段の事情が存在する場合に限り,ブログの管理者は不法行為責任を負うものと解される



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石川県労働委員会が昨日交付した命令書は次の通り。

命令書

中央労働委員会は、2月17日付で、今回の事件の参考となる命令を交付したことを公表している。

事件名は、ゲオホールディング不当労働行為再審査事件(平成26年(不再)第8号)

関心のある方は、中央労働委員会のホームページを閲覧してください。



石川県労働委員会で審査されている海員労組と海員組合の間の2件の不当労働行為事件のうち、本日、第1号事件の命令が交付された。

第1号事件は、私が組合長を務める海員労組(全日本海員組合従業員労働組合)が、海員組合に第2回団体交渉を石川県内で開催することを求めたのに対し、これに応じなかったことが団交拒否の不当労働行為にあたるかが争われた。

石川県労働委員会が出した命令の主文は次の通り。なお、申立人は海員労組、被申立人は海員組合のこと。

                         主   文

1 被申立人は、申立人が平成26年3月4日及び同月10日付けで申し入れた団体交渉について、石川県内において、これに応じなければならない。

2 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートルの白紙に明瞭に記載して、被申立人の従業員らの見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
                            記

全日本海員組合従業員労働組合
    組合長 北山 等 殿
                                                 平成 年 月 日
                                                 全日本海員組合
                                                  組合長 森田 保己

 当組合が行った下記の行為は、石川県労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。今後、このような不当労働行為を繰り返さないようにします。
                            記
貴組合から平成26年3月4日及び同月10日付けであった石川県内での団体交渉の開催申し入れに応じなかったこと


これにより、海員組合は、わが国有数の労働組合でありながら、前代未聞と言われた、昨年6月に東京都労働委員会が下した不当労働行為救済命令に続き、石川県労働委員会において重ねて不当労働行為が認定されたことになり、さらなる社会的非難を受けることは不可避であろう。

労働組合は、最も高度な自治が求められる中にあって、海員組合の現状は、コンプライアンスやガバナンスが喪失していると言わざるを得ず、その責任は、これらの問題を主導してきた組合幹部にあることは明白である。

協和海運問題などでは、正義の労働組合を演じ、海員労組との間では不当労働行為を繰り返す使用者という、ダブルスタンダードも甚だしい正体が、組合員の前に曝け出されることになった。

東京都労委の下した不当労働行為救済命令について、海員組合は中労委に再審査申立てを行ったものの、1回の審査で終結し、現在、中労委命令が下るのを待っている状況である。

今回の、石川県労働委員会の不当労働行為救済命令に対しても、海員組合は15日以内に中労委に再審査の申し立てをすることができる。

しかし、中労委が東京都労働委員会の命令や石川県労働委員会の命令を維持した場合、それを覆すには、国を相手に訴訟を提起するしか海員組合に残された道はない。

海員労組が求めているのは、海員組合との間の一日も早い正常な労使関係の構築である。

誠実に団体交渉に応じるという、労使関係の基本を忘れた行為を繰り返す海員組合の指導部の暴走を止めなければ、組合員にまで不利益を及ぼし、組織のダメージはさらに深刻となろう。

不当労働行為を行った労働組合が、国を相手に訴訟を起こすなどという愚かな事態に至らないよう、今回の命令を海員組合が真摯に受け入れることを求めたい。

また、そうなるよう、組合員の代表である執行部員や職場委員が声を上げ、これ以上の醜態を世間に晒すことがないよう体を張った行動をお願いしたい。

なお、命令文の全文は、なるべく早く、このブログにアップロードする予定にしている。



第二回では、偽計業務妨害裁判の一審判決が認定した事実に触れたい。

裁判所は、まず、海員組合が、人事等に関して違法な行為を繰り返していると言われても仕方がないものである、という点に重ねて言及している。

その根拠として、裁判所は、私に対する解雇や配転命令、自宅待機命令、統制違反処分をいずれも違法または無効であるとした判決が確定していることや、他の海員組合の従業員に対する人事に関しても訴訟で敗訴したものがある点を挙げている。

こともあろうに、労働者の権利を擁護すべき労働組合が、人事に関して違法行為を繰り返していると裁判所に指摘されているのである。

この点を、森田保己組合長や田中伸一副組合長らはどう受け止めたのだろうか。

次に、裁判所は、海員組合が、上記の訴訟の経過や結果について、機関紙その他の媒体で組合員に周知していない点を、事実として認定している。

裁判所は、私がこのブログで情報発信せざるを得ない事情を、情報統制に頼る海員組合のこのような姿勢の中に見出したのではなかろうか。

森田組合長や田中副組合長らは、このような指摘を受け、今後の機関紙誌の編集方針を改めようという気持ちがあるのだろうか。

この判決は、船員しんぶん等において、現時点で一切取り上げられていない。

また、裁判所は、松浦満晴副組合長が、統制委員会において、私を除名してしまうと訴訟になり海員組合が敗訴してしまうが、権利の停止であればそのリスクは少ないとか、私のことを「さらし首」、「さらし者」にできるといった趣旨の発言をしたこと、統制違反処分とされた事実関係を真剣に調査し検討するという姿勢が皆無であったこと、松浦氏の「事理明白」との発言に統制委員が安易に同調していったことを、真実として認定している。

松浦副組合長は、このような不名誉な指摘をどう受け止めたのだろうか。

さらに、裁判所は、船員しんぶんへの謝罪広告の掲載を海員組合に命ずる判決が確定したにもかかわらず、海員組合がこれを無視し続けたことも真実だと認定している。

確定判決を無視するという判断に、自分たちが深くかかわった点を裁判所に指摘され、森田組合長や田中・松浦両副組合長らには、何か思うところがあるだろうか。

海員組合は、間接強制に基づく制裁を受けることを恐れて、やむなく上記の確定判決に基づく謝罪広告を掲載したのだが、この紙面についても、裁判所は、異様な体裁及び内容であると認定した。

証人尋問において、この紙面を示された平岡英彦中央執行委員は、「全然違和感を感じませんでした」と述べたのだが、「異様な紙面である」という裁判所の指摘と自身の感受性との隔絶を前に、平岡氏には何か感ずるものがあったであろうか。

私には、この判決は、おしなべて常識的な判断を示したものだと感じられた。

上記のような傍若無人な振る舞いを続けるようでは、森田組合長らは、厳しい批判に遭っても仕方がないであろうというのが判決の要点である。

海員組合は、私が本文記事で用いた「無法者」という表現についても、これを名誉毀損だと主張してきたのだが、私にとっては、このような海員組合の主張こそが、すでに社会常識から大きくずれてしまっているように感じる。

法治国家において、法律を守らない者のことを、世間では「無法者」というのである。


海員組合は、このブログという「偽計」によって業務を妨害されたと主張して、私に対し損害賠償金1億円を請求する訴訟を提起したのであるが、1月15日に言い渡された一審判決は、このような海員組合の主張を全て否定した。

判決言い渡しからしばらくが経過し、それなりの分析も済んだことから、このあたりで、何回かに分けて、この判決について考えるところを書き連ねてみようと思う。

第一回では、海員組合の主張とそれに対する裁判所の判断を取り上げてみたい。

なお、判決全文は、1月20日の記事「偽計業務妨害 ⑰ 判決文」に掲載したので、そちらを参照していただきたい。

まずは、原告たる海員組合の主張を見ていただきたい。


本件ブログの表題が「いかんぜよ海員組合」という原告について否定的な印象を与えるものであること,被告が記載したことにつき争いのない本文欄には,原告について否定的な記事が反復,継続して執拗に投稿されていること,原告と被告との間に数々の訴訟が係属しており,被告は,副組合長選挙において藤澤に敗れた以降,原告に対する恨みを晴らすべく執拗な反組合活動に取り組んでいることなどの事情からすれば,本件コメントも被告自身が書き込んだものと思料される。

本件ブログ記載には,原告につき,「キチガイ集団」,「完全な死に体」,「究極の馬鹿集団」,「腐っている」,「低脳集団」,「異常」,「無法者団体」,「非合法組織」,「完全にいかれ集団」,「酷い・愚か者の集団」,「詐欺師集団」,「でたらめ」,「海運界を潰した」,「悪徳な会社経営者や労務担当よりもっと悪徳な連中がのさばる」,「人間の所業とも思えない,違法で異様な人事が絶えない」などと評する表現があり,これらを目にした者が,原告に対し,無能,違法,悪徳,堕落,腐敗といった悪印象を抱く危険性があることは論を待たない。それだけでなく,本件ブログ記載には,当時原告の組合長であった藤澤につき,「馬鹿」,「アホ」,「無責任」,「偽善者」,「正常でない」,「普通の人の感覚すら持っていない」,「組合長としても,組合執行部としても,社会人としても,そして人間としても最低」と表現し,当時副組合長であった田中についても,「頭は悪いけど性格も最悪,しかも世間知らず」,「史上最悪の役員」と表現し,さらに,原告の執行部員らにつき,「組合にはびこる吸血鬼」,「かす」,「偽善者」,「キチガイ」,「犯罪者」,「馬鹿」,「ボケ共」,「規約違反者」,「大罪人」,「馘首・降格人事・配置転換・シカト人事などによって従業員に恐怖心をもたせ,無言なることを強制している」,「会社側に寄り添い組合活動の根底を潰す」などと述べる記載が含まれている。これらの表現により,原告の組合長,副組合長,執行部員らの社会的評価が低下したことはいうまでもないが,組合長らは原告の代表者等であるから,これらの者の社会的評価が下がれば,原告の社会的評価も下がる関係にある。また,以上の表現は,原告の業務活動を著しく妨害するものでもある。



海員組合は、コメント欄の記載も、全て私が書き込んだものだと主張したのだが、その根拠は、何も示されなかった。

海員組合は、本文の記事も、コメントも、一緒くたにして、全て私が責任を負うのだといって、その損害額は1億円は下らないと主張してきたのである。

これに対する裁判所の判断は、次のとおりである。まず、ブログの本文記事(番号1~番号10)について。


番号1~4を含む本文記事は,本件解雇を無効とする判決が確定したにもかかわらず,原告が被告に対して同判決を潜脱するような内容の本件配転命令,第1回自宅待機命令及び第2回自宅待機命令を行っているとの事実を摘示し,「コンプライアンスが存在しない」,「違法行為を是正するという機能が失せている」,「コンプライアンス違反を繰り返す」,「労働組合としての自律機能が損なわれている」,「コンプライアンスについて全く無知な指導部」などと意見ないし論評を述べるもの,番号5を含む本文記事は,前記控訴審判決が確定したこと及びこのことを原告が組合員に周知しなかった事実を摘示して,「違法行為は隠蔽し」,「人事権の濫用や事実無根の統制違反をでっち上げ葬り去ろうとする」との意見ないし論評を述べるもの,番号6~8を含む本文記事は,原告が被告や他の原告の従業員に対して違法な人事を繰り返している事実を摘示して,「指導力を人事権の濫用と情報統制に頼るという異常な組織運営」,「執行部員や事務職員に対する不当な人事が横行している」,「海員組合で,人間の所業とも思えない,違法で異様な人事が絶えない惨状」との意見ないし論評を述べるものであることが認められ,いずれも原告の社会的評価を低下させるものといえる。

番号9を含む本文記事は,本件統制違反処分に先立つ平成22年12月20日に行われた原告の統制委員会の議事内容の録音を被告が入手したが,この録音によると,統制委員長の松浦が,自ら被告について全権利の停止処分を提案し,除名処分を求める意見に対しては,除名してしまうと訴訟になり原告が敗訴してしまうが,権利の停止であればそのリスクは少ないとか,被告を「さらし首」,「さらし者」にできるといった趣旨の発言をしており,統制処分違反とされた事実関係を真剣に調査し検討するという姿勢は皆無であり,同人の「事理明白」との発言に統制委員が安易に同調していく様子が浮き彫りになっているとの事実を摘示し,このような労働組合の統制委員会により組合員の人権と生活が破壊されていくのかと思うと,おぞましく恐怖に襲われ,その意味においてこの録音が「驚くべき」ものないしは「恐ろしい内容」であるとの意見ないし論評を述べるものであることが認められ,原告の統制委員会において真剣な審議が行われていないと指摘するものであるから,原告の社会的評価を低下させるものといえる。

番号10を含む本文記事は,原告に対して「船員しんぶん」への謝罪広告の掲載等を命ずる判決が確定したにもかかわらず,原告がこれを履行しないとの事実を摘示し,原告の役員が「無法者」であるとの意見ないし論評を述べるものと認められるから,原告の社会的評価を低下させるものといえる。

原告は,平成22年3月16日に本件解雇を無効とする判決が確定した直後,同月18日付けで,被告に対し,本件配転命令及び第1回自宅待機命令を発し,同年8月1日付けでも改めて第2回自宅待機命令を行い,平成23年1月21日には本件統制違反処分を行ったが,これらの処分のいずれについても違法又は無効と判断する判決が確定しており,他の原告の従業員に対する人事に関しても訴訟において原告が敗訴したものがあること,その意味において,原告が人事等に関して違法な行為を繰り返していると言われても仕方がないものであること,原告は,原告が敗訴した上記訴訟の経過や結果について機関紙その他の媒体によって組合員に周知していないこと,以上の事実が認められ,これによれば,番号1~8が前提とする事実の重要な部分は真実であると認められる。

また番号9の前提とする事実についても,その重要な部分は真実であると認められる。

そして,平成25年3月28日に原告に「船員しんぶん」への謝罪広告の掲載を命ずる判決が確定したにもかかわらず,原告は,同年6月5日号の「船員しんぶん」において初めて上記判決の内容に沿った謝罪広告を掲載したことが認められるから,番号10が前提とする事実の重要な部分も真実であると認められる。

そして,本件本文記事には,「無知」,「人間の所業とも思えない,違法で異様な人事」,「無法者」などといったやや過激な表現も含まれているが,原告が違法な処分や不当な人事等を行っていることを指摘する本件本文記事の趣旨からすれば,これらの表現が意見ないし論評の域を逸脱したものであるとまでいうことはできない。

以上によれば,本件本文記事については,違法に原告の名誉を毀損するものとは認められない。また,以上に説示したところに照らすと,本件本文記事が違法に原告の業務を妨害するものということもできない。これらの判断に反する原告の主張は,採用することができない。


以上のとおり、私が書いた本文記事に関しては、裁判所は、記載内容は全て真実であるから、これらの記事が海員組合の名誉を毀損したとしても、海員組合は私に対して損害賠償を請求することができないとした。

要するに、海員組合の側に責められるべき事実が認められるのだから、これを批判されてもやむをえないであろうということである。

次に、各コメント(番号1~番号131)については、裁判所は、次のとおり判断している。

本件コメントのうち番号5~81428294143485657606678798184858791~949899110112118129は,藤澤,大内,田中ら原告の役員等の個人を特定して,その資質,能力,行状等について述べるものであり,その対象となっている個人の社会的評価を低下させ,あるいは名誉感情を害する余地はあるものの,原告自身の社会的評価を低下させるものと認めることはできず,原告との関係において名誉毀損に当たるということはできない。また,番号58122123125も,当該箇所が原告の社会的評価を低下させるものとは認め難い。

番号11011202136~404244~4749~55646568~7375~77828388~9095~97100~103は,原告や原告の中央執行委員等が,不当解雇,不当労働行為,不適切な会計処理,パワーハラスメント等の法令や組合規約に違反する行為を行ったり,人事権の濫用,被告を中傷する内容の文書の配布などを行ったりしていること,原告内部において違法行為を是正する体制が機能していないこと,組合員に対してこれらに関する情報を開示していないことなどの事実を主として摘示し,又はそのような事実を主たる前提として,原告を批判するものと理解され,原告の社会的評価を低下させ得るものといえる。
もっとも,これらのコメントは,多数の組合員を抱える我が国有数の産業別労働組合である原告が違法行為等を行っていることを指摘するものであるから,公共の利害に関する事実に係るものであること,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定できない。また,これらのコメントが主に摘示し又は前提としている事実については,少なくともこれらが真実でないことが明白であると認めるに足りる証拠はない(なお,被告に対する本件解雇,本件配転命令,第1回自宅待機命令,第2回自宅待機命令,本件統制違反処分等については,これらを違法ないし無効とする司法判断が確定していること,原告が人事等に関して違法な行為を繰り返していると言われても仕方がないものであることは,既に認定したとおりである。)。

番号4は,原告が作成したパンフレットに記載されている政策提言を紹介する本文記事に対するコメントで,同提言を批判し,そのような提言をする原告ないし原告の役員につき「頭の出来を疑う」と述べるものであり,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難く,その前提とする事実は重要な部分において真実であると認められる。

番号9,80は,その記載内容に照らすと,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,抽象的な表現にとどまっており,これに対応する本文記事や前後のコメントの内容等を勘案しても,いかなる事実を前提とするものであるかは必ずしも判然としないのであるが,公共の利害に関する事実に係るものであることや公益を図る目的で投稿されたものであることを否定するに足りないし,真実ではないことが明白である事実を前提とするものと認めることもできない。

番号12,13,15~19は,原告のホームページの内容を紹介する本文記事に対するコメントであり,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,その前提とする事実は,当該本文記事の記載内容に必ずしも限られるものではなく,原告が違法行為を繰り返し行っていることをも踏まえた原告に対する評価と理解し得るものであって,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難いし,その前提とする事実が真実ではないことが明白であるということもできない。

番号22~27は,以前は「船員しんぶん」の特集版で原告の四半期末の会計報告が組合員に配布されていたところ,これが近時は目に付かないようになっているが,これは原告の規約に従っていないではないか,労働組合の会計報告には徹底した情報公開が求められるなどと意見を述べる本文記事に対するコメント,番号34も主として同本文記事の記載を受けたコメントであって,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難いし,その前提とする事実が真実ではないことが明白であるということもできない。

番号30~33,67は,これらのコメントが投稿された各本文記事に直接現れていない事実を指摘するものであり,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,公共の利害に関する事実に係るものであり公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難いし,その前提とする事実が真実ではないことが明白であるということもできない。

番号35は,前段は,その記載内容に照らし,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,抽象的な表現にとどまっており,これに対応する本文記事や前後のコメントの内容等を勘案しても,いかなる事実を前提とするものであるかは必ずしも判然としないのであるが,公共の利害に関する事実に係るものであることや公益を図る目的で投稿されたものであることを否定するに足りないし,真実ではないことが明白である事実を前提とするものと認めることもできない。また,後段は,原告の外国人組合員ないしフィリピン人組合員の現状について述べる本文記事を受けて,「フィリピン人船員に搾取のJSU (注・原告のこと)はもういらない」との意見を述べるものであるが,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難いし,その前提とする事実が真実ではないことが明白であるということもできない。

番号596163は,本件本文記事の番号9に対するコメントであり,同本文記事の内容に対する感想ないし意見を述べたもの,番号74も,当該統制委員会の議事の録音の反訳文を掲載した本文記事に対する感想ないし意見を述べたものと理解され,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,いずれも公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難く,その前提とした事実すなわち本文記事の記載は重要な部分において真実であると認められる。また,番号62も,本件本文記事の番号9に対するコメントであり,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,その前提とする事実は,当該本文記事の記載内容に必ずしも限られるものではなく,原告が違法行為等を繰り返し行っていることをも踏まえた原告に対する評価と理解し得るものであって,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難いし,その前提とする事実が真実ではないことが明白であるということもできない。

番号86は,原告の組合長の藤澤の原告従業員に対する平成24年の年末の挨拶文や同年の役員選挙から,原告の人事をめぐって原告の中央執行委員会で藤澤と副組合長の田中らとの間に対立関係が生じていることを指摘する本文記事を受け,原告がこれまで違法行為を繰り返していることも踏まえて,「現場で組合らしからぬ行為の連続」であると指摘し,「上層部にいる人間が正常な感覚を持っていない」,「現場組合員は奴隷」と評するものと理解され,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難いし,その前提とする事実が真実ではないことが明白であるということもできない。

番号104~109は,平成25年6月5日号の「船員しんぶん」の内容を紹介する本文記事に対するコメントであり,その記載内容に照らすと原告の社会的評価を低下させ得るものである。この「船員しんぶん」の第1面の最下段には,謝罪広告の掲載を命ずる確定判決に基づく謝罪広告が掲載されたが,この第1面の一番上には「組合長選挙無効裁判勝訴!!」との大見出しの下,「最高裁,北山等氏への立候補権の侵害を認めず」などと前記の訴訟の判決の内容を紹介する記事が掲載され,その下に「北山等氏,本組合に多額の金銭を要求」との見出しの下,被告がこれまで原告及び原告関係者に対して数々の訴訟を提起しており,請求してきた損害賠償金の総額は6630万円,裁判所の認容金額は818万円に上っていることなどを内容とする記事が掲載されているところ,上記の訴訟の判決が確定したのは2か月以上前のことで,しかも原告が勝訴した部分のみを報じ,被告がこれまでの訴訟において原告や原告関係者に対し根拠のない請求を繰り返しているかのように受け取られる内容となっており,あえて上記の謝罪広告を目立たないようにしていて,この点において異様な体裁及び内容のものと言われても仕方のないものである。上記各コメントはこのような「船員しんぶん」に対する感想ないし意見と理解され,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難く,その前提とした事実は重要な部分において真実であると認められる。

番号111113114は,海運会社から原告に対して名誉毀損の責任を追及する訴訟の控訴審で海運会社の請求を認容する旨の判決が言い渡されたことについて,原告がこれを組合員に全く知らせていないことを指摘し,これは労働運動の基本を忘れているなどと意見を述べる本文記事に対するコメントであり,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難く,その前提とした事実すなわち本文記事の記載は重要な部分において真実であると認められる。

番号115~117119120は,田中ら原告の7名の常任役員が組合長の藤澤を統制委員会に告発し,統制委員会が藤澤に対し3か月間の全権利停止の統制違反処分を行い,これに対して藤澤が地位保全仮処分命令の申立てを行った件に関する本文記事に対するコメント番号121124126130131は,原告の全国大会において藤澤の上記統制違反処分に対する不服申立てが退けられるなどした件に関する本文記事に対するコメント番号127128も上記の藤澤に対する統制違反処分に関わる経緯等を踏まえたコメントであって,上記本文記事に記載された事実や原告が違法行為等を繰り返している事実を主な前提として意見を述べるものであり,原告の社会的評価を低下させ得るものであるが,公共の利害に関する事実に係るものであり,公益を図る目的で投稿されたものであることは否定し難いし,その前提とする事実が真実ではないことが明白であるということもできない。

そして,上記に掲げた各コメントの中にはいささか品位を欠く表現が用いられているものも散見され,節度を持った意見表明が望まれるところであるが,労働組合である原告あるいはその役員が人事等に関して違法な行為を繰り返し,あるいは組合員に対して情報を開示していないなどといった現状に対する憤りを表現したものであると理解されるのであって,上記の各コメントがいずれも意見ないし論評としての域を逸脱しているとまでいうことはできない。

そうすると,各コメントについては,いずれも名誉毀損についての違法性阻却事由が存しないことが明白であるといった特段の事情が存在すると認めることはできない。
被告が本件ブログの管理者として,本件コメントに対して削除等の措置を執らなかったことが,原告との関係において不法行為に当たると認めることはできない。この判断に反する原告の主張は,いずれも採用することができない。



以上のとおり、裁判所は、各コメントに関しても、これらが前提としている事実は真実であるか、もしくは真実でないことが明白であるとはいえないとして、私の責任を明確に否定した。

裁判所は、「各コメントの中にはいささか品位を欠く表現が用いられているものも散見され,節度を持った意見表明が望まれるところである」としながらも、「労働組合である原告あるいはその役員が人事等に関して違法な行為を繰り返し,あるいは組合員に対して情報を開示していないなどといった現状に対する憤りを表現したものであると理解されるのであって,上記の各コメントがいずれも意見ないし論評としての域を逸脱しているとまでいうことはできない」と判断している。

この部分、特に前段については、コメントを寄せてくれる読者の皆さまも、ぜひ肯定的に受け入れていただきたい。私も今後のブログ運営の指針としたいと考えている。