5月22日(月)午後2時45分から、海員労組と海員組合の第13回団体交渉が開催された。

交渉事項の①は、暫定労働協約の締結で、未解決事項の「掲示板の設置」と「文書の配布」について協議したものの、海員組合側の態度は全く変わらないものであった。

労働運動において、従業員間のコミュニケーションが重要であることが理解できないようで、いまだに時代錯誤の「施設管理権」を持ち出すなど、本業が労働組合であることを忘れたかのような姿勢を崩していない。

交渉事項の②は、新再雇用職員規定の遡及的撤廃と旧再雇用職員規定が有効であることの確認だ。

海員組合は、東日本大震災による財政的理由から、平成18年に設けられた「再雇用職員規定」を平成24年4月に一方的に改悪し、さらにその翌年には「継続雇用職員規定」に衣替えした。

海員労組は、この改悪の本質が、東日本大震災に名を借りた、再雇用職員いじめであるとにらんでいる。

そのため、東日本大震災により、再雇用職員の期末手当を不支給としなければならなかった財政的理由について、詳細な説明を求めている。

海員組合では、執行部員や事務職員の労働条件について、平成26年から今年まで、4年連続ベースアップを行うとともに、平成27年には、それまで年間46割であった期末手当(ボーナス)を47割に増額し、平成28年には48割としている。

これを見れば、いまだに再雇用職員の期末手当を不支給にした理由が、東日本大震災による財政的理由であると言い続ける海員組合の姿勢は、滑稽にさえ見える。

交渉事項の③は、再雇用契約または継続雇用契約によらない定年後の雇用形態について、その採用の条件及び労働条件の説明を求めるものだ。

海員労組は、海員組合に対し、27名在籍する60歳以上の「臨時雇用職員」の雇用形態や労働条件等について、繰り返し説明を求め、今回は文書で具体的な回答を行うことになっていた。

しかし今回出されたペーパーは、ゼロ回答に等しく、全く具体性の無いものであった。

ここまで海員組合が説明を拒むのには、余程の不都合な理由があると見られてもしょうがない。

労働基準法では、企業に雇用されている者は、パートタイマーであっても、就業規則を作成し、労働基準監督署に届けるとともに、従業員に周知しなければならない。

交渉の中で海員労組は、「臨時雇用職員」について、就業規則を届けているか尋ねたところ、海員組合の回答は、「届けていない」というものであった。

労働基準法を無視してまで「臨時雇用職員」について説明を拒んでいるのである。

海員組合は、労使関係を持つ船主が、同じような態度をとったとしても、了解しなければ、ダブルスタンダードというものだ。

違法行為や不当労働行為を繰り返す労働組合に、コンプライアンスを求めても無意味ということなのか。

それが船主にも伝播したら、船員社会の将来はどうなるのか心配である。






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2017.05.18 組合財政 ③
これまで、海員組合の財政について、収入に視点を当ててきたが、支出に目を転じて、探ってみたい。

海員労組は、海員組合との間の団体交渉で、再雇用職員の期末手当を不支給にしたことを追求するため、組合財政に関する詳細な資料提供を求めてきた。

その中に、一般会計の年度別推移を示した資料が提出されている。

この資料は、第62年度(平成18年8月1日~平成19年7月31日)から直近の第71年度(平成27年8月1日~平成28年7月31日)までの、各年度の主要な項目の推移を示しているものだ。

まず気になるのが人件費だが、第71年度の人件費総額は15億2千175万円で、第62年度の17億9千809万円と比べると、2億7千634万円も減少している。

しかし、1人当たりの人件費単価は、第71年度が704万5千円に対し、第62年度は668万4千円で、逆に36万1千円増加している。

その理由は、第71年度の組合従業員数が219名に対し、第62年度は267名と48名も大幅に減少していることにあり、当然と言えば当然だ。

注目すべきは、人件費単価が増加していることで、年間臨時手当の支給率アップや、賃金の改善等がここに表れているものとみられる。

誤解が生じないように付言すると、ここで言う人件費は、給料・一時金に加え、社会保険料や労働保険等を含む金額である。

海員組合の活動は、執行部員をはじめとする組合従業員によるところが大きく、それなりの労働条件を整えることは必要であるが、その水準や内容については、常日頃からチェックの目が必要だ。

理不尽にも、再雇用職員の期末手当だけ不支給とし、他の組合従業員の期末手当をアップしているなどということは、許されるべきではない。

次に実際の活動にかかった経費だが、第71年度の一般経費総額は、25億9千258万円で、これから人件費を差し引くと、10億7千83万円となる。

第62年度は、一般経費総額28億906万円から人件費を差し引くと10億1千97万円となり、第71年度との差は、5千986万円の増額に止まっている。

ここから読み取れるのは、総収入が第71年度と第62年度と比較すると、5億6千453万円の大幅増収となっているにもかかわらず、実際の活動に費やす経費はあまり伸びていないということだ。

これについての評価は分かれるだろうが、少なくとも収入に見合った活動が展開されているとは言い難いのではないだろうか。

次回は、具体的な各経費項目の変化から、海員組合の活動の実態を探ってみたい。







2017.05.12 組合財政 ②
海員組合の財政が、外国人組合員(非居住特別組合員)に大きく依存しているということは周知の事実だ。

そこで、組合費収入の具体的内容を紹介する。

前回に続き、直近の第71年度決算(平成27年8月1日から平成28年7月31日まで)と、その10年前の第61年度決算(平成17年8月1日から平成18年7月31日まで)を比較してみた。

第61年度の組合費収入は、総額で39億円、内訳は、日本人組合員の組合費総額17億5千1百万円(外航部門が2億5百万円、水産部門が3億2千5百万円、国内部門が12億2千1百万円)、非居住特別組合員の組合費が大部分を占める「その他組合費」が21億4千9百万円である。

第71年度では、組合費収入の総額は、46億4千1百万円、内訳は、日本人組合員の組合費が総額13億9千6百万円(外航部門が1億5千9百万円、水産部門が2億3千3百万円、国内部門が10億5百万円)、その他組合費が32億4千4百万円である。

ここから見えるのは、まず組合費が10年間で39億円から46億4千1百万円と、7億円以上も大幅に増加したことだ。

その主因は、その他組合費が11億円近く増収したためであり、残念ながら日本人組合費は、3億5千5百万円の大幅な減少となっている。

これは、組合規約で定める完全資格組合員が大幅に減少し、組合規約で権利が大幅に制約されている非居住特別組合員(外国人組合員)が驚くほど増えたためだ。

日本人組合員と非居住特別組合員の組合費の比率は、第61年度が45対55であったものが、第71年度では30対70に大きく変化し、「全日本海員組合」を名乗ることさえ、憚られる状況だ。

恐らく、非居住特別組合員(外国人組合員)に、日本人組合員と同等の権利行使を認めれば、たちまち名称は変更され、組合役員も外国人が占めることは想像に難くない。

このような実態について、海員組合内部ではどのような議論が行われているのであろうか。

一見、安定しているかに見える組合財政であるが、国際情勢が大きく変容するなどのリスク要因は無いのであろうか。

世界では、米国大統領のトランプ氏が暴言王と揶揄され、これに倣えと、フィリピン大統領のドゥテルテ氏が、フィリピンの暴言王ともてはやされている。

共通するのは、それまでの概念を破るような、驚くことを言いだすことである。

わが国外航海運にとって、フィリピン人船員の存在は、なくてはならないものとなっている。

ドゥテルテ大統領が、海員組合の中で、フィリピン人船員の権利が大きく制約され、非居住特別組合費として多額の金銭を納めている実態を知った時、何を思うだろうか。

長らく続く、グローバル化の波は、昨今の保護主義の台頭で、先行きは不透明との見方が強まっている。

そうなると、ITF(国際運輸労連)が中心となり進めてきた、フィリピン人船員から組合費を徴収するシステムに影響は無いのであろうか。

海員組合は、何も起きないことを願っているようであるが、それよりも、何が起きても大丈夫なように対策を講じておくことが重要なのではないだろうか。






2017.05.09 組合財政 ①
海員組合は、海員労組との団体交渉において、再雇用職員の期末手当を不支給とした理由の一つに、東日本大震災により、多数の組合員と家族が被害に遭うとともに、海員組合の支部建物にも甚大な損害が出たため、約10億円の赤字予算を立てたことを具体的な理由としている。

しかし、決算においては、約4億円の赤字に収まり、予算とは大幅な狂いが生じる結果となった。

そこで、海員組合の財政が、再雇用職員の期末手当にまで手を付けなければならない、厳しい状況にあるのか、検討してみたい。

検討の方法は、いろいろあるが、直近の第71年度決算(平成27年8月1日から平成28年7月31日まで)と、その10年前の第61年度決算(平成17年8月1日から平成18年7月31日まで)を比較してみたい。

組合会計は、大きく分類すると、一般会計と特別会計から成り立っている。

これは国の財政と同じであり、一昔前の財務大臣が、母屋ではお粥をすすっているのに、離れではすき焼きを食べていると言ったことが思い出されるが、その母屋が一般会計で、離れが特別会計ということになる。

まず第61年度の一般会計は、収入の部が69億3千5百万円に対し、支出の部が28億9千6百万円であり、その差は40億3千9百万円となる。

これから特別会計に繰り入れた資金の5億3千7百万円を差し引くと、次年度繰越金35億1百万円が算出される。

第71年度は、収入の部が125億5千6百万円に対し、支出の部は26億2百万円で、その差は99億5千4百万円となり、これから特別会計繰り入れ資金の11億9百万円を差し引くと、次年度繰越金が88億4千5百万円となる。

つまり、この10年で収入の部が、倍近い伸びを見せ、それにより、次年度繰越金も2倍以上に膨れ上がっている。

特別会計の主なものは、設備会計、共済給付会計、争議金庫会計、退職資金会計、政治資金会計などであるが、その次年度繰越金を見ると、いずれも第61年度と同水準を維持している。

これらを総合して見ると、組合財政は潤沢と言え、組合費の値下げの声が、組合員から出てもおかしくないような実態だ。

海員組合は、団交の中で、東日本大震災で流失した支部建物の建設が今後予定されるとして、これの建設資金が将来リスクとして残っていると強調している。

想定している支部建物は、1支部100坪、職員4名の配置を考え、建替える可能性のある5支部の建設資金総額を6億9千万円としている。

この費用は設備会計から支出されるものと思われるが、第71年度の設備会計の次年度繰越金は、51億3千万円であり、建設資金に不安があるとは、とても思えない。

海員組合の財政は、極めて健全であることに疑いはなく、こうした実態がありながら、再雇用職員の期末手当不支給についてこだわり続ける姿勢は、不誠実と言わなければならない。

一昔前の財務大臣の弁を借りれば、母屋も離れもすき焼きを食べていると言われそうである。

組合財政についてよく見ると、いろんなことが見えてくる。

次の機会には、さらに掘り下げた組合財政の実態について報告したい。








4月17日に開催された海員労組と海員組合との第12回団体交渉における交渉事項の4番目は次の内容だ。

④賛助組合員に組合規約に定める完全資格組合員の権利を与えること

海員労組は、これまでの団体交渉で、賛助組合員が労組法第5条2項で定めている「組合員」に該当するか否か、海員組合に対し、何度も見解を求めてきた。

海員組合は、今回の団交で、ようやくその見解を明らかにした。

それは、「賛助組合員は労組法第5条第2項に定める組合員ではない」というものである。

労組法第5条第2項(3)号は次のとおり規定している。

連合団体である労働組合以外の労働組合(以下「単位労働組合」という。)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。

現実に、賛助組合員は、すべての問題に参与する権利は認められず、均等の取扱を受けていないことから、この見解は予想されたものだ。

そうすると、組合規約に定める、完全資格組合員(組合規約第5条)以外は、労組法に定める組合員ではないということになる。

そこで問題なのは、労組法上において、組合員でない者を、組合規約で「組合員」として規定し、組合費を徴収していることだ。

賛助組合員や非居住特別組合員から徴収された金は、完全資格組合員と同じく、組合費として一括りにされ、海員組合の活動に使われている。

海員組合の組合費収入の内訳は、完全資格組合員が納める組合費が約13億9千6百万円に対し、賛助組合員や非居住特別組合員などが納める組合費は、約32億4千4百万円となっている。

つまり、完全資格組合員は、組合費収入の僅か3割しか納めていないのに対し、権利が与えられない賛助組合員や非居住特別組合員は、7割も納めているのである。

ちなみに、組合従業員の年間の給料や一時金は、約13億円であるが、この金額は、完全資格組合員の納める金額と同じである。

海員組合では、完全資格組合員が納める組合費では、組合従業員の人件費しか賄えず、実際の組合活動に使われる諸経費は、賛助組合員や非居住特別組合員に頼らなければならない実態なのである。

これが労働組合のあり方として正常と言えるのだろうか。

やはり、賛助組合員や非居住特別組合員についても、労組第5条第2項に定める「組合員」としなければならないのではないだろうか。

今のままでは、賛助組合員や非居住特別組合員は、単なる都合の良い寄付者ということになる。

この問題は、組合費の7割を占める賛助組合員や非居住特別組合員の権利の問題であり、海員組合が真面目に対応しなければ、大きな禍根を残すことになるであろう。

今後の団体交渉において、引き続きこの問題を、さらに詰めていきたい。