「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届けなければならない。(以下略)」

これは労働基準法第89条に定められている就業規則の作成及び届出義務に関する規定である。

この労働基準法第89条に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられる。

海員組合には約200名の従業員が働いており、海員組合も当然、労働基準法に定める就業規則の作成と届出の義務がある。

ところが、驚くことに海員組合は、就業規則を労働基準監督署に届けていないのである。

これは明らかな労働基準法違反である。

海員組合の就業規則問題については、平成26年1月28日に開催した第1回団体交渉において、海員労組が指摘した。

海員組合には、組合従業員の労働諸条件を定めた「組合従業員規定」がある。

第1回団体交渉で海員労組は、「組合従業員規定」が就業規則として労働基準監督署に届けられていない事実を指摘し、直ちに届け出て、労働基準法違反状態から1日も早く脱することを強く要求した。

ところが田中伸一副組合長は「違法行為という認識は全くない」と言い放ったのである。

労働問題に疎い中小企業のワンマン社長ならいざ知らず、全日本海員組合の副組合長が、労働基準法のイロハを理解していないような態度には、わが目を疑うばかりであった。

4月10日に開催した第2回団体交渉においてもこの問題が話し合われた。

その中で、事実として判明したのは、現在においても、海員組合は就業規則を労働基準監督署に届けていないということであった。

これについて海員労組は、第1回団体交渉同様、直ちに労働基準監督署に届けることを求めたところ、海員組合は、現在就業規則を整理中と回答した。

労働基準法違反状態を1日も早く是正するためには、漠然と整理中と言うことではなく、具体的な届出の時期を示すよう求めたが、整理中を繰り返すばかりで、誠実な団体交渉とは言えない態度に終始した。

なお、第2回団体交渉では、第1回団体交渉で田中伸一副組合長は違法行為ではないとしていたが、これを翻し、違法行為であることを認めた。

海員労組がこの問題を第1回団体交渉で取り上げてから1年2カ月以上が経過している。

にもかかわらず、未だに整理中として就業規則を届け出しない海員組合の態度は、表わす言葉を見つけることも困難な酷い話である。

これまで、従業員に対して違法行為を繰り返し、労働委員会でも不当労働行為を2度も命令された労働組合は、ここまでの状況になるかと思うと恐怖心さえ覚える。

船員しんぶん4月15日号の一面は、協和海運の不当労働行為に対する森田保己組合長が先頭に立ち行った街宣活動が大きく紹介されている。

その一方で、森田保己組合長、田中伸一、松浦満晴両副組合長をはじめとする組合指導部は、自らの従業員に対して、不当労働行為を繰り返すだけではなく、労働基準法に違反しているのである。

こうした状況を全国の組合員が知れば何を思うであろうか。

また、海員組合と労使関係を持つ全国の船主は、海員組合との信頼関係にどのような考えを抱くのであろうか。

第2回団体交渉では、さらに驚くべきことが明らかにされた。





4月10日(金)午後1時から、金沢勤労者プラザ内の会議室において、海員組合と海員労組との第2回団体交渉が開催された。

第2回団体交渉については、海員労組が石川県金沢での開催を申し入れたのに対し、海員組合がこれに応じず団体交渉が実現しないことから、石川県労働委員会に不当労働行為救済申立てを行ったところ、金沢での団体交渉開催を海員組合に命じる不当労働行為救済命令が本年2月18日に交付された。

ところが海員組合は、石川県労働委員会の命令を不服として、2月25日付で中央労働委員会に再審査の申立てを行い、その通知が中労委から海員労組に届いたのが3月5日であった。

その2日後の3月7日、海員組合は海員労組に第2回団体交渉を金沢で行いたいとの団交申入れを行ってきた。

石川県労働委員会の金沢での団交に応ぜよとの命令の棄却を中労委に申し立てた海員組合が、一方では、金沢での団交を申し入れるとの態度に、警戒感を持ちながらも、団交の実現は海員労組の要求であり、これに応ずることとした。

団交に参加した海員組合のメンバーは、勘場賢次総務局長を筆頭に、鈴木順三総務部長のほか計5名であった。

海員労組は、組合長である北山等一人で交渉に臨んだ。

団体交渉は、田中伸一副組合長が交渉委員長を務めた第1回交渉とは態度を変え、和やかなムードを演出し海員組合は臨んできた。

海員組合が交渉の中で繰り返し発言したのは、東京都労働委員会においても、石川県労働委員会においても主張していた、団体交渉を拒否する意思はなかったとするものであった。

しかし、東京都労働委員会においても、石川県労働委員会においても、海員組合の主張が退けられ、不当労働行為であることが認定されたことについては、それらの命令を不服として中労委に再審査の申立てをしているので、その判断を仰ぎたいと繰り返した。

こうした発言の背景には、第2回団交が実現したことにより、労働委員会における救済の必要性が既に消滅していることを中労委の審査でアピールすることが狙いであることが透けて見えた。

その証左は、第2回団交開催の1か月前に海員労組が海員組合に対して文書で質問し、それに対する海員組合からの文書回答の内容から明らかである。

海員組合が団交の二日前の夜にFAXで送ってきた回答内容は、海員労組の質問に真面目に答えるものは少なく、不誠実な回答が多々あったからである。

この点について、団交の中で厳しく質しても、質問の趣旨が十分理解できなかったなどと述べ、誠実さは全く感じられないものであった。

団体交渉は、交渉会場使用期限の午後5時まで続けたが、結局のところ、海員労組にとって肝心な項目については、主張の隔たりは大きく、何一つ解決することは出来なかった。

交渉の中で強く感じたのは、海員組合が労働組合であるという自覚の欠如である。

都労委や地労委の不当労働行為救済命令は、中労委に再審査を申し立てても履行義務は免除されない。

これについて海員組合に指摘すると、十分理解していると言いながらも、海員組合が相手する使用者も同様に、初審の命令を履行していないことを説明するのである。

不当労働行為救済の手続きは、労働組合法で定められている。
その労働組合法に定められた初審命令履行義務を、労働組合法で労働組合としての資格が認められている海員組合が無視することは、常識的には考えられないことである。

第2回団体交渉において交渉事項とした各項目の具体的交渉内容については、別途お知らせすることにしたい。

その中には、驚くべき事実も含まれていた。



船員しんぶん3月15日号(第2764号)がホームページに掲載されたのが3月16日であった。

その後、次の掲載は3月25日号と思いこみ、ホームページに熱心にアクセスしていたが、なかなかアップされなかった。

発行の遅れは、いつものことと思い待っていたが、4月の声を聞くと、一体どうなっているのかと思わずにはいられなかった。

なにせ、3月は労働組合にとって一番大事な、労働協約改定交渉が行われ、組合員が最も海員組合の活動に注目する時期だからである。

例年の船員しんぶん3月25日号は、いわゆる海員春闘と呼ばれる労働協約改定交渉の進展状況を報告する記事が一面を飾ることが多かった。

まして25日号は、月に一度の家庭直送版であり、組合員のみならず組合員のご家族の方々も期待している船員しんぶんなのである。

ついにホームページに掲載されたのが4月6日、だがその日付は4月5日号(第2766号)であった。

その一面は「1800円ベースアップで妥結」との大きな見出しで、大型カーフェリー、内航二団体、全内航の海員春闘の妥結結果を報告するものであった。

海員春闘の妥結内容の評価については、別の機会に譲るとして、この時期に3月25日号が発行されなかったことは、労働組合の機関紙として全くの怠慢としか言いようがないと思っていた。

ところが、船員しんぶんの発行番号を見ると、3月15日号が第2764号、4月5日号が第2766号となっており、その間に第2765号が存在することが分かったのである。

なぜ第2765号はホームページに掲載されないのであろうか。

海員組合の活動方針によれば「機関紙・誌は組合機関と現場組合員とを結ぶ架け橋である。」とし、ホームページについても「トピックス、組合行事、お知らせなどの更新を随時行うとともに、さらに、一般閲覧者も関心が持てるよう、内容を充実させていく。」となっている。

ところが実際の海員組合のホームページはどうであろうか。

船員しんぶん第2707号(平成25年6月5日)には、「執行部員・北山等君に対する統制違反処分の無効とお詫び」と題する中央執行委員会全員の連名による謝罪広告が掲載されているが、未だにホームページにはアップされていない。

これでは、船員しんぶんのホームページへの掲載について、不都合なものは恣意的に判断していると言わざるを得ないのである。

労働組合法では、組合員は、労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱いを受ける権利があると定められている。

労働組合には組合員に隠すような情報は存在しないのであり、現状が続けば、海員組合は、労働組合としての新たな問題を惹起することが危惧される。

船員しんぶんを「現場組合員とを結ぶ架け橋」と声高に唱える組合幹部の姿を想像すると、背筋が凍る思いをするのは、私一人ではなかろう。




渡邊長寿氏(道東支部執行部員)が海員組合を相手に起こした裁判は、和解協議に移行しているようだ。

渡邊長寿氏の裁判の模様については、渡邊長寿君を励ます会が発行する「SUPPORTER NEWS」と竹中正陽氏が発行責任者となっている「羅針盤」に詳しい内容が掲載されている。

それらによると、昨年12月16日の第5回裁判で、突然海員組合側は「これ以上の主張・反論は予定していない」と発言し、裁判官に和解の意思を表明したという。

これに対し渡邊氏側は「請求内容が全て認められるなら、和解協議もやぶさかではない」と表明したため、裁判官主導の和解協議が始まった。

第1回和解協議は1月22日に開かれ、海員組合側の和解案が、裁判長経由で渡邊氏側に伝えられた。

その要旨は、次の通り。
①和解成立の翌月1日付で、北海道地方支部副支部長道東支部勤務の人事を発令する。
②降格人事に伴う賃金差額は和解金という形で支払う。

これに対し渡邊氏側は、以下の問題点を指摘した。
①慰謝料の支払いを無としていること。
②平成25年12月25日付懲戒処分(10%賃金カットなど)が撤回されていないこと。
③機関会議への出席停止が解除されていないこと。
④和解後、不当人事を行わない確約が不明なこと。
⑤副支部長への復帰時期により、賃金や退職金等についての不利益を被る恐れがあること。

第2回の和解協議は2月26日に開かれ、裁判官による双方別々の聞き取りが行われ、渡邊氏側から、絶対譲れない内容として、降格処分と懲戒処分を遡って取り消すこと、賃金差額の支払いと厚生年金等級遡及是正、機関会議出席停止措置の撤回、謝罪表明であることを裁判官に伝え、その内容は、組合側にも裁判官を通じて伝えられた。

第3回の和解協議は4月3日に行われたようであるが、その内容は、今のところ伝わってきていない。
前回からの流れでは、渡邊氏側の条件に対する海員組合側の回答が示され、和解協議が進められたものと思われる。

民事訴訟において、和解による決着は珍しいことではなく、裁判所が積極的に和解を促すケースが多々見受けられる。

問題は、判決であろうが和解であろうが、合意した内容が厳守されなければ真の解決にはならないということである。

最終判断は、当然のこととして渡邊長寿氏に委ねられるが、海員組合がこれまで司法判断について示してきた態度を十分に検証することも重要であろう。

私の場合、不当解雇が最高裁で確定した直後、海員組合は違法な自宅待機を命じて、私を組合活動から隔絶し、実質的に最高裁判決を無意味なものとしようとしたのである。

私が裁判所に申し立てた全国大会への入場を拒絶してはならないとの仮処分命令について、裁判所はこれを認め仮処分命令を発したが、海員組合はこれを無視し、私を全国大会へ入場させなかったのである。

こうした海員組合のこれまでの態度からすると、渡邊長寿氏が示している和解条件は、決して厳しいものではなく、譲りシロはほとんどないものと思われる。

「SUPPORTER NEWS」によると、渡邊氏を励ます会にカンパを寄せられた方は84名に上り、今後も増加の傾向である。

渡邊氏と海員組合との闘いは、決して彼一人のものではなく、程度の差こそあれ渡邊氏と同様な処遇を経験している方々も、その帰趨について固唾を呑んで見守り、支援しているのである。

海上労働運動に身をささげ、海員組合の発展に貢献してきた執行部OB、職場委員OB、全国委員OBの方々も、現状の海員組合を憂い、渡邊氏支援に多数が手を挙げその輪は広がっているのである。

海員組合が、自らの従業員の処遇についてさえ、司法のお世話にならなければならないというのに、労使関係のある船会社の従業員の労働条件について、「労働組合」として平然と関与していることに、世間の目はますます厳しさを増すことであろう。

渡邊氏の闘いは、海員組合再生への闘いでもある。多くの方々の引き続きの支援をお願いしたい。


2015.04.01 藤澤裁判 ②
2月5日の船員しんぶん(第2760号)に「元組合長藤澤洋二氏と全面和解」の記事が掲載された。

これを見て驚いた方は多かったのではないだろうか。かくいう私も、まさかと目を疑った一人である。

藤澤洋二氏は、統制処分により、組合長職を奪われ、退職に追いやられたため、統制処分の無効と組合長の地位の確認等を求め東京地裁で争っていた。

統制処分の理由が、外部の弁護士に規約の解釈を照会したことや、藤澤洋二氏が発信した私的メールが組織統制を乱すものであったということであったが、私の感覚では、裁判所がこれらを認めることはないものと思われ、藤澤洋二氏に有利な司法判断が下るものと予想していた。

藤澤洋二氏は、統制処分が確定した直後に、東京地裁に仮処分命令の申立てを行ったが、残念ながら却下された。その理由は、全国大会での抗告の機会が残されており、その前に司法判断を下すのは適当ではないという裁判所の判断であった。

その仮処分命令には、全国大会での抗告が受け入れられなかった場合は、再度の仮処分命令申し立てを示唆する内容があった。

こうしたことからも、裁判所の心証は、藤澤洋二氏有利との見方が有力であった。

私が知る限り、執行部員が統制処分で退職に追い込まれたという事例は記憶にない。ましてや現職の組合長が、自らが議長を務める中央執行委員会の告発により統制処分になるということは前代未聞という外はなく、その屈辱は比類の無いものである。

それにもかかわらず、藤澤洋二氏は海員組合との訴訟を和解より終結してしまったのである。

和解条件を見ると、平成25年9月20日付で組合を退職したことを確認したうえで、退職金を支給することで、藤澤洋二氏は全ての訴えを取り下げるというものである。

平成25年9月20日は、藤澤洋二氏に対して、3か月間の全権利停止処分が第330回全国評議会で決定した日である。

つまり、藤澤洋二氏は、退職金の支給を引き換えに、統制処分を認めてしまったのである。

竹中正陽氏が発行責任者となっている「羅針盤第15号(2015年2月20日発行)」によると、藤澤洋二氏は、平成26年10月以降、国が指定する難病に罹患して長期入院を余儀なくされているという事情が書かれている。

藤澤洋二氏は、難病のため退職金を早期に確保しなければならない経済的事情があることを推測させる記述である。

個人的な事情を憶測することは控えたいが、裁判に勝てば、退職金は確保される。また、健康上の問題があったとしても、代理人弁護士を立てているので、本人が訴訟に参加せずとも、訴訟の遂行は可能である。

私は、藤澤洋二氏が、外部の弁護士に規約の解釈を照会したなどという瑣末な理由で統制処分になることに、全く納得できない。

仮に、藤澤洋二氏が統制処分になるとすれば、私に対する不当解雇、自宅待機および統制処分など、司法判断によって確定した違法行為の数々の責任を負い、統制処分となるべきと考えるからである。

その際は、藤澤洋二氏だけではなく、当時の中央執行委員会を構成していた、大内教正氏、田中伸一氏、森田保己氏、松浦満晴氏をはじめとする面々も統制処分とされるべきと考えている。

今回の藤澤洋二氏の和解は、本来統制処分となるべき面々の中で、藤澤洋二氏だけが、その責を負わされ放逐されたとの感が否めない。

今回の和解で、藤澤洋二氏の問題は一応の決着がついたことになるが、未だに、統制処分に値するような違法行為を繰り返してきた組合幹部が居座っているという本質的問題が未解決であることを決して忘れることがあってはならない。